この記事では、闇金からの借金に返済義務はあるのか?、そして元金・元本も返済不要というのは本当なのか?を解説していきます。
闇金では法外な超高金利を取られるため、一度手を出すと利子さえも払いきれない借金地獄に陥ってしまいます。
その執拗な取立てに精神的に追い詰められてしまうこともあります。
しかし、闇金は完全な違法行為のため、返済義務はありません。逆に、絶対に返済してはいいけないのです。
今回は、闇金からの借金を返済しなくてよいワケ、そして上手な対処法について解説していきます。
闇金の超高金利は違法
お金を借りる時に発生する金利は、出資法と利息制限法という法律で上限が定められています。
現在の金利の上限は年利20%で、銀行や、正規の消費者金融、クレジットカード会社などはこの法律に則り、上限を超えない金利で貸し付けを行っています。
しかし、闇金業者はこの法律を完全に無視し、上限をはるかに超えた金利で貸し付ける場合がほとんどです。
「トイチ」という言葉を聞いた事があると思いますが、これは10日で1割の利子が付くという意味です。言い換えると、1日1%の利子、1年365日で365%になります。
例えば、5万円を借りると、10日で5,000円の利子が付きます。
法律上の上限20%で計算すると、10日で約273円です。
この違いをみれば、これがいかに暴利なのかお分かりになるのではないでしょうか?
実際、闇金業者がどのくらいの金利で営業しているか、正確な情報は表に出てこないのでわかりにくいのですが、トイチよりもさらに悪い「トサン」「トゴ」等とも言われています。
トサンはと10日で3割、トゴは10日で5割です。
ここで、わかりやすいように年間の金利として並べてみましょう。
- 出資法・利息制限法の上限:20%
- トイチ:365%
- トゴ:1095%
- トサン:1825%
法律は完全無視の信じられないような金利ということがわかります。このような超高金利での営業は完全な違法行為です。
金利の上限は法律で定められている
闇金による高金利が法律違反であることを以下に説明します。
金利に関する法律には、出資法、利息制限法の2種類があります。
まず、出資法では、金銭の貸付業を行うものは、金利年20%を超える契約をしてはならないという規定があります。
貸金業者ではない個人から個人への貸付けでは、最高金利は年109.5%と定められているため、中にはこの法律の網をくぐって営業する業者も少なくありません。
いずれにしても、これらの法律を破った場合には、罰則が定められています。
出資法での罰則は次のようになっています。
金利 | 罰則 |
---|---|
貸金業者が20%を超える利息の契約したとき | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 |
貸金業者が109.5%を超える利息で契約したとき | 10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金 |
貸付を業としない者が年109.5%を超える利息で契約したとき | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 |
利息制限法では、貸し付ける金額に対して、金利の上限を次のように定めています。
元金 | 金利 |
---|---|
10万円未満 | 上限20% |
10~100万円未満 | 上限18% |
100万円以上 | 上限15% |
各貸付金額における上限以上の金利をかけた場合、その規定の金利を超える分については無効となります。
例えば、100万円を借りて年20%の金利をかけられたとき、15%から20%までの差、すなわち5%分の利子は無効となります。
すでに上限を超えた利子を支払ってしまっている場合は、この超過分は元本に充てられます。
また、上限利息を超えて契約をした場合、貸し付けた貸金業者は貸金業の業務停止、登録取り消しなどの行政処分の対象となります。
元本の返済義務もない
民法では、第90条で「公序良俗」について定めています。
第90条「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律違反は、無効とする。」
闇金による出資法の上限をはるかに超える金利での貸付は、社会的妥当性がない法律違反です。
さらに悪質な取立ても社会的秩序に反した行為であり、闇金による法外な高金利での貸付は、契約自体が「無効」となると考えられます。
また貸金業第42条でも、年109.5%を超える金利での貸付契約は無効となると定めています。
契約が無効ということは、お金を借りる前の状態に戻るということです。
そうなると、「利息は払わなくてもよいが、借りた元本は返さなければならないのでは?」と考えることができます。
しかし、民法では第708条において「不法原因給付」が定められているのです。
第708条「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときには、この限りではない。」
闇金融では、法外な高金利で貸し付けをして、その利息を収受することを目的としているため、「不法な原因のための給付」と考えられます。
そのため法律上、闇金は法律違反の利息はおろか、給付した「元本」も請求することはできないということになります。
このようなことから、闇金からの借金は、元本も含めて一切返済する義務がありません。
ただし、最初から返済するつもりもなく借り入れをすれば、詐欺として訴えられますので、そのようなことはやめましょう。
よりによって相手は闇金です。もともと返すつもりではなかったとばれてしまえば、何をされるかわかりません。
判例
以下は、闇金の不法な高金利貸付にて元本を含む弁済金全額の返還を認めた判例です。
高等裁判所レベルで元本を含む全額の返還を命じた初の判例として、その後も参考とされています。
札幌高等裁判所平成17年2月23日判決
本件は、貸金業法に定めのある登録貸金業者が、出資法5条所定の利率を大幅に上回る年利1200パーセントという超高金利の貸し付けをした事案である。
判決は、この貸し付けが、違法行為の手段に過ぎず、民法上の保護に値する財産的価値の移転があったとは評価できないとして、元本相当額を含む弁済額全額の返還を認めた。
『消費者法ニュース』63号38ページ
印鑑証明に注意
さて、闇金は完全な法律違反ですので、仮に正当な裁判となれば闇金に勝ち目はありません。そのため、闇金もいざという時のために頭を使っています。
お金を借りるとき、印鑑証明を要求されたら要注意です。
闇金との契約の際、いろいろな書類に実印を押すよう促され、いわれるままに押印してしまいがちですが、中に公正証書作成の委任状が含まれている場合があります。
公正証書は正式な書類のため、これがあれば裁判をしないで強制執行を実行することもできます。万が一このようなことになると、裁判を起こして強制執行停止を申し立てるという面倒な事態となってしまいます。
公正証書は本来正式で法的力のある書類なのですが、闇金はあらゆる手を使ってこの公正証書まで作成してしまいます。
そして真実である法外な金利を記入する代わりに、貸付金額を大幅に水増しして作成します。
被害者側としては、闇金からの借用書などがない限りは実際に借りた金額や金利などの真実を立証することは大変難しいという状況となってしまいます。
闇金からお金を借りるくらい切羽詰まっている状態ですと、頭の中も整理できずに言われるままに行動してしまいがちですが、実印押印、印鑑証明という話になったら一呼吸おいて考える時間をとらなければいけません。
絶対に返済してはいけない
闇金は、高金利の利息を取ることで儲けを出しています。もともと元本を返してほしいとは思っていません。元本が残っていれば利息を永遠にとることができるからです。
はじめは「利息だけ返してくれればいいですよ」などとうまいことを言い、のちに支払いが遅れたりすれば脅したり嫌がらせをしたり、あらゆる手段で執拗に取立てをします。
こうなると、お金を返さなければという義務感と恐怖心から泣く泣く返済してしまう人がほとんどです。
しかし、闇金には絶対に返済してはいけません。上記のように、闇金は違法行為で返済の義務はありません。
その上、一度返済すれば闇金の思うつぼで、脅せばまだまだ取ることができると思わせてしまうのです。
闇金からの借金がある人は、すぐにでも弁護士や司法書士に相談しましょう。その際は、闇金に強い弁護士や司法書士を探すことが必要です。
闇金と知らずに借りてしまった人も、闇金と気づいたらすぐに弁護士に相談しましょう。
当サイトでは、ヤミ金問題を扱っている弁護士や司法書士を地域別にまとめたページも公開していますので参考にしてみてください。
まとめ
闇金からの借金は返済義務がないことがおわかりになったでしょうか?
闇金による超高金利での貸付は完全な違法行為であり、元本も含め返済の義務はありません。これは、高等裁判所による判例も出ています。
出資法や利息制限法により、貸金業者からの貸付の金利上限は20%と定められているのです。これ以上の金利をかけた場合は、刑事罰や行政処分の対象となります。
そして、違法な高金利での利息収受が目的の貸付は、不法な目的のための給付と考えられることから、法律上は闇金がその貸付金の返還を請求することはできないのです。
闇金からお金を借りてしまったら、絶対に返済してはいけません。執拗な取立てに負けて一度でも返済してしまうと、脅せばもっと取れると思われてしまいます。
闇金と関わってしまったら、一刻も早く弁護士や司法書士に相談しましょう。