こんにちは、当サイトの管理人です。
今回は、友人に裏切られた大金を失った男性の体験談をご紹介します。
友人に裏切られ、初めて認識した借金の恐ろしさ
運なのかなんなのか、僕自身がお金に不自由したという経験は、産まれてこの方一度もありませんでした。
当時、僕は水商売、いわゆる夜の仕事をしていて、その業界では成功していると言っても過言ではない程の売り上げと、厚い束のお給料を頂いていました。
ブランドの財布の中にはいつでもぎっしりと1万円札がつまっていて、スーツや洋服にいくら使ったか、食事にいくらお金を使っていたかなんて気にしたことがないくらいに裕福な暮らしをしていました。
今思えば、そんな生活を送っていた僕に金銭面で頼るのは当たり前なのかもしれません。
人にお金を貸して、後悔。しかし、次の日には返済があり…
初めて人にお金を貸したのは、入店から二か月ほど経ち、自分の欲しいものを買えるくらいには懐に余裕ができてきたころでした。
当時仲の良かった店の後輩と一緒に買い物に出かけた時、一着のジャケットをじーっと見つめる後輩を見て、すぐに彼が何を考えているのかわかりました。
「お金、足りないんやったら貸したろか?」
「え? いいんですか」
先輩としての威厳を示したかったからなのか、僕は無意識のうちにその言葉を口にしていました。
吐いた唾を飲むわけにもいかず、明日の営業終わりに返すという約束で、僕は後輩に、人に初めてお金を貸しました。
その時、すごく後悔したのを覚えています。笑顔で会計を済ませる後輩を横目に、「もし返してくれんかったらどうしよう」という不安が頭の中をぐるぐると巡っていました。
しかし、僕の疑心に反して、そのお金は次の日に約束通り、あっさりと手元に返ってきたのです。
(ああ、なんや。人に金貸しても、意外とあっさり返ってくるもんなんやな)
母に「借金だけは絶対にするな」と強く言われていたのですが、貸す側なら大した事ないんだな。そんな風に思いました。
人に貸すことに抵抗がなくなった僕。返済を催促することも億劫になり…
それからは、いくら人にお金を貸したか覚えていません。
鳴った電話の3回のうちに1回は、「金を貸してくれないか」という内容のものでした。
理由は様々です。他で借りたお金(ホスト遊びの借金)の返済日に間に合わないから助けてくださいという内容のものや、一番多かったのは、携帯代が払えないからというもの。額は1万円から、50万円なんてものもありました。
特に考えもせず色々な人にお金を貸していたので、どのお金を返してもらっていて、どのお金を返してもらっていないかが曖昧になってきて、それをわざわざ聞いて回るのも億劫だったので、自分から返済を催促することはありませんでした。それほど金銭感覚が狂っていたのです。
同窓会で久しぶりに会った友人に、借金を申し込まれ…
僕が借金の恐ろしさに気がつくのは、それから半年以上経った日のことでした。
正月の休みを利用して久しぶりに地元へ帰った僕は、高校時代から仲の良かった友達数人と集まっていました。
「お前、最近どうなの」と、同窓会の常套句のような質問が飛び交う中、それぞれの自慢話を鼻高々に話し合います。気がつけば、みんなの視線は僕へと向けられていました。
仲間たちのリクルートカットに短く切られた髪と対照的に、毛先を遊ばせた、明るく長い髪の毛。頭の先からつま先まで、ブランドでかためられた男。
「ええよなあ、お前は」みんなが口々にそう言いました。正直、いい気分でした。
その帰り道、中学からずっと仲の良かったAが僕に「ちょっと相談あんねんけど」と、珍しく真面目な声色でそう言われ、ただごとじゃないと思った僕は、みんなと駅で別れた後、Aを僕のマンションへと招きました。
Aの話は、つまり、金を貸してほしいという事でした。聞くと、母親の身体にガンが見つかって、その手術費が必要だという、それこそなんというか、ありきたりな理由でした。
「200万円貸してくれ」さすがに、すぐにはうなずけませんでした。
しかし、「時間はかかるけど必ず働いて返すから」と涙目で乞われ、気がつけば僕は、「そんなら、分かった。返さんかったら絶交やぞ」と言ってしまいました。
僕は不用心にも、お金を銀行に入れずに家へ置いておく人間だったので、寝室のタンスに隠した封筒からしっかり数えて200万円を束でAに手渡しました。
「ほんまに、ほんまにありがとうな」
「酔っていて覚えていない」と言い張る友人。友情は崩壊へ
それから一か月後、約束の返済日になっても連絡のないAに電話をしたのですが、つながる先は何度かけても留守番電話サービスでした。
(もしかして騙された?いや、友達疑うなんて最低やろ)そんな思惑が巡り、事実を確かめるため、Aの家まで行きました。チャイムを鳴らすと、以外にもあっさりとAは姿を見せました。
「なんや、どうしたん」
「いや、どうしたんちゃうやろ、借金まだ振り込まれてないで」
「え?なんのこと?」
一瞬、意味が分かりませんでした。
「お前ふざけんなよ」
「え?何が?」
そんな問答が数十分続き、Aの口から出た言葉は、あの時は酔っぱらっててあんまり覚えてないし、借りてないものは返せんという内容でした。
結局、僕はAからお金を返してもらうことはできず、そのまま泣き寝入りしました。
僕がショックだったのは、お金が返ってこない事よりも、ずっと長い時間をかけて積み重ねてきたAとの友情がこんなにもあっさりと崩れ去るものなんだと知ってしまったからです。
人間関係というものは、友情や愛情に限らず、お金が絡むことによっていとも簡単に歪み、崩れてしまうのです。
僕はそうしてようやく、借金の恐ろしさを知りました。