現在41歳の専業主婦です。私が20歳頃の時のことをお話しようと思います。

親元を離れて就職して2年。お給料は安いけど、ボーナスもあるので少し貯金もできるようになった頃です。

ある日、友人のAから電話がかかってきました。Aは同郷の友人で、帰省した時に集まる仲間のうちの一人で、良く電話もする相手でした。

「5万円ほど貸してもらえん?」

なぜかと聞くと、今月の保険の支払いがどうしても足りないと。父親が入院していて家計が逼迫している。母親も体調が思わしくなく働けないという話は以前から聞いていました。頑張ってやりくりしてきたけど、今月はどうしても足りないとのこと。

私は彼を大事な友人だと思っていたし、彼の境遇に同情もしていたので、迷いましたが5万貸すことにしました。5万は当時の私にしては大金でしたが、貸せないほどの額でもありませんでした。10万だったら貸せなかったかもしれませんが、ギリギリの額だったのです。

言われた口座にお金を振り込み連絡すると、「ありがとう。絶対返すからな」と、真剣な口調で言われました。私はその言葉を全く疑わず、「大変だね。頑張って」といたわりの言葉すらかけました。

しかし、その日を境に、時々あった電話が途絶えたのです。

お金を返してほしい気持ちはありましたが、大変な状況なのに催促するのも悪い気がしてこちらからは連絡できませんでした。その一方、連絡できないような状況になっているのでは・・・という心配もあり、やきもきする毎日でした。

そんな状態で1年ほど経った頃、久しぶりに同郷の仲間が集まりました。Aはいません。

他の友人たちに、「最近Aから連絡ある?」と聞かれました。ないと答えると、その友人たちはAと縁を切ったと言うのです。

驚いて理由を聞くと「金を借りて返さないから」とのことでした。Aは周りの友人に片っ端からお金を借りてトラブルになっているらしいのです。しかも、使い道はパチンコ。

それを聞いた時、言いようのないショックを受けました。貸さなきゃ良かった、ということもありますが、自分が騙されたこと、その程度の友人でしかなかったことが一番のショックでした。私は大事な友人だと思って、心配していたのに。今思えば、5万円という金額も貸してもらいやすい金額だとわかっていて言ってきたのでしょう。

その後、結局私はAに連絡をしませんでした。Aからも連絡はなく、今に至ります。

風の噂では、今も借金しながら暮らしているらしい。パチンコ屋でも良く見かける。そして、昔の友人とは全く付き合いがないようです。

返ってこなかった5万円は勉強代だと思っています。

どんなに親しい間柄でも、お金なんて貸すものじゃない。お金よりも大事なものを失ってしまうことが一番怖く、悲しいからです。